二風谷の工芸品

自然との
対話から生まれる
ものづくり

 アイヌの手仕事から生み出される道具や衣服などの工芸品は、たんなる“ものづくり”ではありません。つくり手は自然から素材をいただき、恵みを与えてくれたカムイへの感謝と敬意の心をかたちにしていきます。そうしてつくり上げたものには魂が宿り、それを持つ人を守るよう、ひとつひとつに願いが込められています。
 そして、アイヌの工芸品には華麗な文様がほどこされます。文様は、地域や家族の中で受け継がれるもので、二風谷にもこの土地らしい文様があります。つくり手は伝統の文様を守りながら組み合わせをアレンジし、自分の表現としてデザインしています。

マキリ

 両刃の小刀のこと。木製の柄(つか)と鞘(さや)には緻密な文様が刻まれています。マキリは山仕事、獲物の解体や調理、護身用など、日常のあらゆる場面に欠かせない重要な実用品として、つねに腰に下げていました。マキリづくりは男性の仕事とされ、使う本人が文様をデザインして彫り上げていました。小型のマキリはメノコマキリといい、おもに女性用です。男性は自作したものを好きな女性に贈り、気持ちを伝えました。

ニマ

 木彫りの器のこと。平らな皿状のものからえぐった椀や鉢のようなものまで、さまざまな形状とサイズがあります。イタ(盆)もニマと呼ばれることがありますが、多くは文様の装飾が少なく、皿状や椀型のものは日常づかいの食器だったようです。大きなニマは、団子や餅をつくるときや、洗い物などに使う調理器具でした。把手(とって)が付いたニマは、把手部分に文様をほどこすなどデザイン性に富んだものも見られます。

アイヌ刺繍の衣服

 アイヌ文様の美しさがもっとも際立つのは刺繍でしょう。19世紀以降、木綿の布や糸が流通し始めると刺繍の技法が発展し、モレウノカ(うずまきの形)を中心とする複雑で優美な文様がほどこされるようになりました。
 伝統的な衣服のひとつ「チカペ」は、着物にテープ状に切った黒や紺の布を縫い付け、その上から刺繍したものです。文様は、複数の文様にまたがって一筆書きのように切れ目なく縫っていきます。アイヌ文化には、開いているところから魔物が体に入ってくるという考えがあり、袖(そで)口や裾(すそ)、また背中などに入れた刺繍の文様が魔除けの意味を持つとされています。ほかにも、髪をまとめる鉢巻き「マタンプ」などの布小物にも刺繍をほどこしました。とくに、男性用の持ち物に華麗なデザインが多く見られます。

アイヌ文様について